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高齢者のエンドオブライフケアを考える
多職種が連携しているから、
良いお看取りができる。
Part2 ~施設での毎日は、管理ではなく生活~
ターミナル期を迎えると、高齢者の方は意思の表現が難しくなります。そのため、ご本人の意志をどのように尊重するべきか、医療や介護の現場で議論になることが多々あります。ヒルデモア/ヒュッテでは多職種が連携してチーム一丸となって、最期の時間をご自分らしく送っていただけるように取り組んでいます。
認知症ケアについて研究されている群馬大学大学院の伊東美緒教授、ヒルデモア/ヒュッテの村上看護師、ヒルデモアの望月ケアスタッフが、ターミナル期における多職種連携の重要性について語り合いました。
- 伊東先生
- 村上看護師
- 望月ケアスタッフ
看護師とケアスタッフの
関係が良いからこそ
良いお看取りができる。
望月ケアスタッフ:施設では看護師がケアスタッフに指示を出しますが、なぜその処置が必要なのか、しっかり話をして理解し合うことが必要ですね。
伊東先生:そうです、看護師とケアスタッフの関係が良くないと、良い看取りはできません。関係が良くないと、入居者の状態が悪くなってくると病院に任せようとなってしまいます。
病院の仕事は、本人の意志や苦痛を汲み取ることではなく、命をつなぐことです。ベッドに寝かされて苦痛を感じながら治療を受けて命をつなぐことが、本当に良いのでしょうか?私が知っているケースでは、施設の看護師が「いま病院に行ったらかわいそう」と言って、入院した入居者を迎えに行ったこともあります。
最期が近くなると、ご家族の意見も割れて、「やっぱり病院でできることをやってほしい」と訴えられるかもしれません。しかし、生活を送ってきた施設で、顔なじみのスタッフや看護師に苦痛をやわらげてもらい、見守られながら、最期のときを迎える方が良いと感じてほしいですね。
望月ケアスタッフ:まだ経験が浅いころは、お看取りを「つらい」「さみしい」「悲しい」と感じていました。しかし、良いお看取りができると、ネガティブなことばかりではないことがわかってきます。まだ息があるときは、くだらない話をして笑ったりして、怖さはまったく感じませんでした。
伊東先生:十分に長寿な高齢者の看取りは、それで良いですよ。良い看取りをした事例ができれば、自信になって広がっていきます。
村上看護師:末期がんの方を受け入れてお看取りまでさせていただいたことは確かに自信になり、次に機会があれば、お引き受けしてみようと思えるようになりました。いまは、良いお看取りができることが、ヒルデモア/ヒュッテの強みだとも感じています。
施設での毎日は、管理ではなく生活。
情報の記録と共有があって、
生活が成り立つ。
村上看護師:認知症の方だけでなく、お看取り期が近づいてくると「水を飲まない」「食べない」など嫌がることが増えてきます。嫌がることをどう捉えるかで、声かけが変わってきますよね。
望月ケアスタッフ:無理に食べさせようと「お口開けてね〜」と言うのではなく、他のものを口に運んでみると食べてくれたりします。だんだん食べられるものや好きなものが変わってくるのは当たり前なので、その気づきを記録するようにしています。最近はスタッフの記録の量がどんどん増えてきています。
伊東先生:記録を残すことはとても大切です。記録を多職種で共有し合うからこそ、気付きがあります。また、看取りについて家族と話し合うとき、つい家族の思いが出てしまいますが、記録を元に「ご本人ならどう思いますか?」と聞くと、家族と一緒に考えることができます。
望月ケアスタッフ:声を出せない全介助のご入居者が、徐々に水も飲めなくなってきたのですが、夜になると用意した全量を飲んでくれたりすることがありました。日々の記録を付けていくうちに、「この方は昼夜逆転しているのでは?」とスタッフが気づき、昼は無理に起こさず、夜に起きたらゆっくりごはんやお茶を飲んでもらうと、今までよりもずっと摂取が進んだことがありました。
伊東先生:それが生活ですね。家庭だと食事の時間も睡眠の時間も自由ですから、それが再現できているということ。良い風土ができています。
日本の介護施設は、生活ではなく施設管理になっているところもまだまだ多いです。施設に入ったら朝は必ず起きてご飯を食べなければならない、というのは生活ではなく管理です。
望月ケアスタッフ:昼夜逆転していたご入居者の件も、記録を共有していたら自然とみんなでそんな話になりました。
村上看護師:状況の共有ができているからですよね。記録だけではなく、困ったときはインカムですぐに共有するので、迅速な対応もできていると思います。
多職種が連携している
ヒルデモア/ヒュッテは、
他の施設の見本になれる存在。
望月ケアスタッフ:いろいろなところで働いてきましたが、ヒルデモア/ヒュッテは看護師とケアスタッフだけでなく、リハビリやキッチンのスタッフとも垣根なく話すことができます。そこがお看取りまでしっかり対応できるヒルデモア/ヒュッテの強みだと、先生とお話して改めて感じることができました。
村上看護師:時々ぶつかることもありますが、それはご入居者のことを真剣に考えているからこそ。みんな熱いんです(笑)。私も多職種連携ができるヒルデモア/ヒュッテで、施設看護師ならではのやりがいを感じています。
伊東先生:ヒルデモア/ヒュッテは、多職種のスタッフが垣根なく話し合い、入居者の生活のしやすさを追求していることがわかりました。素晴らしい取り組みで、他の施設の見本になれる存在だと思います。ヒルデモア/ヒュッテの取り組みを、これからどんどん外部に発信していってください。
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